働くママの日々是修行。
家庭と仕事の両立に悩むママの生活雑感。
2009
April 29
April 29
先日読んだ「ひかりごけ」のモデルである、遭難からたった一人生還した船長から、15年という歳月をかけて聞きまとめた、食人事件の全容に迫るノンフィクションを読了した。
率直な感想を言うと、生きつづけなければならなかった船長の逃れられない罪の意識と、風評被害の大きさを考えると、哀しくてやるせなくて…。
言葉にできないほど、衝撃を受けた。
アンデスの聖餐事件やパリの人肉事件など、世界でも食人事件はいくつか起こっているけれど、食人を罪に問われたのはこの船長だた一人だ。
殺人を犯したわけでもなく、極寒の知床で食べるものもなく、救助も見込めない状況の中、先に餓死した乗組員を食べてしまうこと。
感情的には納得できないところもあるが、それを否定すると、「人間を食べるのは道徳的に許されないから、お前も餓死しろ」と言うのと同じことになる。
幻覚・幻聴を伴うほどの飢えの苦しみを知らず、本能的に食人してしまった自分を責め続ける苦悩を理解できるわけもない他人が、何かを言ってはいけないと私は思う。
だから、噂や聞きかじりに基づき、「難破船長食人事件」について書かれた「羅臼郷土史」や「しれとこ秘境の記録」「知床秘話」などの著者に、私は大きな憤りを感じる。
自分の想像で膨らませた事件が、一切反論しない当事者を、重い十字架を背負っている当事者を、どれだけ傷つけ続けたのか。考えたことがあるのだろうか?
活字の重みをわからない人間に、文章など書いてほしくない。
いまは天に召された船長のご冥福を、心から祈る。
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